二人はあの後、どうしたんだろう。

元々、繭が碧人に好意を持っている事は、クラスの皆が知っていたし。


碧人だって、それは分かっていたはずで。

きっと、碧人は彼女の涙に絆されて、気持ちを受け入れるのかもしれないな。

そしたら二人は、明日から恋人同士なんだ。


どうにも居た堪れない気分のまま、手にしていた荷物を下ろす。

下ろした途端、プリントの上に小さな滴がポタリと落ち。

それは、静かに滲んでゆく。


私は、グスッと鼻をすすりながら立ち上がった。


黒板に向かい手に取ったのは、白に赤と水色、黄色に緑……紫。

今ここに在るだけの色のチョークを手に取り、相合傘を描いた。


「色、足りないよ……」


現実主義の、伝説なんて信じない私が。

こんな噂話に頼るなんて。と思いながら、碧人と私の名前を刻む。



私だって、碧人の事を好きなのに。

好きだったのに。

気持ちを伝えられないまま、失恋決定なの?


「そんなの……ヤダッ」


黒板消しで相合傘を消し、床に座り込む。

涙の滲んだプリントを握りしめた。


どうにもならない気持ちの行き場がない。

どうしたらいいかも分からない。


「馬鹿ね。泣いてても、この現実は変わらないわよ」