「どうすればいいの? これじゃあ、教室に入れないよ」
半ば、諦めかけていた私は。
ふと「レイ」の存在を思い出した。
学校の伝説は、長い間生徒の間で受け継がれてきた噂。
ずっと、生徒達によって語り継がれてきた話だから、噂が伝説にまでなったのかも……。
だとしたら、私と出会うまで。
レイは長い間、この学校の、あの教室に住み着いていたのかもしれない。
もしかしたら私と同じ様に、歴代の生徒の中で、レイと出会った人がいたかもしれない。
レイは誰かに、七色のチョークを使わせたことがあるかもしれない。
27歳の今が、どんな未来になっていたとしても。
17歳の私がチョークを使った後でも、この学校の生徒達の間で、伝説は受け継がれているはずでしょ。
きっとレイは、この学校に。
あの教室に。
10年経っても、同じ場所に居るんじゃないか。と直感した。
「レイ! レイ、居るんでしょ? 出て来てよ。出て来て、校舎の鍵を開けて。私を校舎の中に入れて」
何処に居るかもわからない、本当に居るかどうかも分からないレイに声をかけ続ける。
けれど、レイからの返事はおろか、シーンと静まり返った校舎からは、物音ひとつ聞こえてこなかった。
「レイ……。もう、ここには居ないの?」



