「涼香!」
碧人を部屋に残し、私はある場所を目指す。
私には行かなければいけない場所がある。
やらなければいけない事が……。
交差点を渡り、見覚えのある商店街を抜ける。
石垣の階段を登り切り、見えてきたのは。
17歳の私が通っていた学校。
校門も校舎も、色が塗り替えられていて。
少し手が加えられている分、10年経った学校に思えないくらい綺麗だった。
校門の鉄格子はガッチリと、頑丈に閉じられていて。
今日が休日だと、お母さんに言われた事を思い出した。
「そっか。休みだから開いてないんだ。部活も、10年も経つと盛んじゃないのかな」
休日でも運動部は練習試合などをしていたはずなのに、10年後には休日の部活動はやっていない様だ。
それに、今の私は27歳。
制服を着た女子高生じゃないし、堂々と校内に入れるわけがないのだ。
「レイの言った通り、どこかから忍び込まなきゃ」
キョロキョロと周囲を見渡しながら、外周をグルリと歩く。
たしか、入学当初に、碧人やクラスの友達と見つけた抜け穴があったはず。
10年経ってしまっているけど、誰にも気づかれていなくて、まだ修理されていなければ。
野球部の部室裏の金網が破れたままかもしれない。
そこから入る事が出来るはず。



