17歳の私が、27歳として生きる。
そんな事になってはいけない。
今、目の前に居る碧人は、27歳の私を愛してくれたんだ。
ずっと抱えていた想いを、17歳の私に教えてくれた。
碧人の気持ちを知る事が出来て、嬉しいけど。
これは、10年後に知るはずだった本当の気持ち。
17歳の私が、知ってはいけなかった碧人の気持ちだ。
私を抱きしめている碧人の腕から、すり抜け身体を起こす。
振り向くと、碧人が私を愛おしそうに見つめていた。
その視線を感じていると、碧人の胸に飛び込みたくなる。
もう一度、一つになりたいと思ってしまう。
けど。
そんな気持ちを、グッと堪え。
私は、碧人に向かって別れを告げた。
「帰る。……碧人、繭の指輪は一人で取りにって。私、行かなきゃいけない所があるの」
「行くって、何処に?」
「……大切な場所」
床に散らばっていた下着類を拾い上げ、身に着ける。
壁に掛かっている大きな鏡を覗き込むと、手前には私。
その後ろには、碧人が私の姿を見つめている。
額縁の様にも見える鏡。
私には、一瞬だけの幸せな時間を切り取った様に見えてしまう。
出来る事なら。
このまま、碧人と一緒に居たい。
27歳の私として、時を重ねるのも悪くないかもしれない。
碧人が、傍にいてくれるのなら……。
なんて。
良からぬ事さえ頭に過ってしまうほど、碧人が恋しい。



