「……後悔してる？」と碧人に尋ねられ、私は両腕で顔を隠し何度も頷く。
そのくせ、碧人の動きに合わせる様に身体中で碧人を感じているなんて。
今の私は、思っている事と、やっている事がバラバラだ。
ただ一つ分かった事は。
27歳の碧人に、17歳の私が「好き」と伝えてはいけない、ということだけはハッキリしている。
私が気持ちを伝えなければいけないのは、17歳の碧人だ。
目の前に居る碧人は、大人の碧人で。
10年後に私が見るはずの碧人。
帰らなくちゃ。
27歳のふりをして碧人に抱かれながら、頭をよぎった思い。
この思いは、間違いじゃない。
私は帰らなければいけない。
帰って、17歳の碧人に伝えなくては。
結果はどうであれ。
ずっと、碧人が好きだった、と。
10年後を覗かせてくれると言った、レイの言葉を思い出した。
「10年後の涼香は27歳。こうして学校の教室にも居ないと思うから、先に言っておくわ。【今】に帰って来るには、この学校に忍び込んで、この教室の、この黒板にチョークで願い事を書くのよ。でないと、帰れなくなって17歳の涼香が27歳の涼香として未来で生きる事になるから」
