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水曜日。


お昼休みが終わり、午後からの授業は睡魔との闘い。

けど、眠気を抑えられるのは同じ教室に、幼馴染のアイツが居るから。


窓際の一番後ろの席から、斜め右前の背中を眺める。


校則違反にならない程度に明るいブラウンの髪。

白いシャツの後ろ姿は、少し撫で肩の背中。

肘をつき、スッとしている指は、シャーペンを耳の辺りでクルクルと回していて。

長めの脚は、少し窮屈そうに机の下でクロスしてる。

たまに、隣の男子とヒソヒソ話しては、声を殺して笑ってる笑顔がチラリと見える。


夕凪碧人(ゆうなぎあおと)、私の好きなヒト。


想うだけで、胸がキューッと締め付けられる程、苦しくなる。


友達と笑いあっていた碧人に、ふと視線を向けられ。

一瞬、目があった私は、恥ずかしくなり視線を逸らした。


「迷ってないで、さっさとチョークを使えばいいのに」


私の耳元で、小さく囁く声の主は。

授業中だというのに、お構いなしに声をかけてくる。


「でも……」


その声に答える様に、私は左肩に目を向けた。


数日前から、私にだけ見える妖精の名は『レイ』