「例え全て忘れてしまったとしても。運命ならまた会えるって言ったのは、お前だろ」


だから、こうして会えたのだと。碧人は私を優しく胸に抱いている。

涙が溢れ、碧人の顔がよく見えない私は、涙を拭おうと碧人の背中から手を解く。

そんな私を離さない様に、碧人の手が頬に触れた。


「俺の願いは、いつ出逢っても俺を好きになるって言い切った涼香に会うことだった。俺の願いを叶えるためには、涼香が必要なんだ」


碧人の指先が私の涙を掬い取ると、私は碧人に笑顔を向けた。


そうだったね。

私が断言したんだっけ。


「思い出せてよかった」


そう呟いた私に、碧人は少し悲し気な表情を浮かべ教えてくれた。


思い出したのではない。

碧人が自分のチョークを使い、私がレイのチョークを使い切る前の過去に戻り。

全てをレイに告げた後、また少しだけ過去をやり直していたことを。


「ちょっとだけ、修正してきたから、お前の記憶は中途半端になって、俺たちの出逢いもレイとの事も全て消えた。けど、俺が過去に戻った時、レイが言ってたんだ」


全てなかった事になってしまっても、運命なら二人は出逢えるはずだと言った私に賭けると。