私は。

大切な人達を心の奥に押し込め、鍵をかけていた。

それが解き放された今、ハッキリとレイの姿を思い出す。


「レ……イ。ブロンドの髪をした、ヤキモチ妬きで泣き虫の妖精」

「そう。レイに自分の事を覚えていてほしくて、お前は無謀な賭けをしたんだ」

「あ……」


氷が解ける様に思い出してゆく。

その感覚は、点と点が繋ぎ合わされてゆく様にも似ている。

脳裏には17歳の私とレイの姿を、鮮明に映し出していた。


そして。

いつも、もやがかかった様に見えなかった、誰かの姿。

子供の頃から、私の夢に出て来た人は……。


そのシルエットと、目の前に立つ彼の姿が重なり。

頬からは一粒の涙がこぼれた。


「……碧……人?」


自然と私の口は、彼の名を呼ぶ。

そんな私に応える様に、彼は。

碧人は、嬉しそうな表情を浮かべ、私を抱き寄せた。

抱きしめられている私は、その居心地のいい胸の中で徐々に思い出してゆく。


私の居場所は、ここだ。

この胸の中が、私の居るべき場所。

私の大好きな人は……夕凪碧人。

子供の頃からずっと、私が好きだった人。


「碧人、碧人っ」


背中に手を回し、私は碧人を抱きしめる。

二度と離れない様に。