最上階に着くと、彼は私の手を引いたまま会議室のドアを開けた。


「ちょっと、夕凪さん? 勝手に入っちゃダメですって……」

「俺が明日使う事になってる場所だから、いいんだよ」


私は彼に引き入れられ。真っ暗だった部屋に明かりがともる。

8畳くらいの会議室は、会議用の長テーブルとパイプ椅子が置かれていて。

そこには、懐かしの黒板が真っ白な壁に掛けられていた。


「今時珍しい。ホワイトボードとかじゃないんだぁ」


なんて、学生時代に使っていた黒板の懐かしさから、目の前の黒板の前に立つ。

そっと黒板に触れてみると、当時の黒板とは違うはずなのに、懐かしさがこみ上げてくるのは何故だろう。

黒板に置かれている黒板消しとチョーク。

私は、ふいに目に留まったピンクのチョークを手にした。


「……放課後とか、よく黒板に落書きしたなぁ」なんて独り言を呟いた私は、黒板に向かい相合傘を描く。


「ふふっ。懐かしいなぁ。夕凪さんの高校でもジンクスとかありませんでした?」

「あったよ」


チョークを片手に振り返った私のすぐ後ろに、彼は立っていた。

その距離の近さに、私は持っていたピンクのチョークを落としてしまい。

拾おうとしゃがみ込んだ私は、彼に優しく抱き締められた。