繭の質問に、ドキッとする。
誤魔化す事もないのは分かっているけれど、私は何故か「知らない。さっきロビーで会った人」とだけ答えた。
「そうなんだ? あの人だよ、電車で涼香ちゃんのバッグを降ろしてくれた人」
「え?」
そうだったの?
今日だけでも、2回会ってたのか。
少し残念に思うのは何故だろう。
電車で助けてくれたから、気になっていただけじゃなくて。
一日のうちに、偶然に何度も会ったからでもない。
私の中で、何かを感じている。
これって何なのだろう。
胸の中で、別の私が心をノックしているみたい、とでも言えばいいのかな。
でも、それが何なのか。
今の私には分からない。
エレベーターを降り、絨毯張りの廊下を歩く。
客室のドアをカードキーで開けると、正面にはツインのベッド。
その先には、ライトアップされている竹林が窓から見えていた。
「わぉ、結構いい部屋じゃん」
繭はツインベッドの一つにダイブし、そのスプリングの良さに飛び跳ねている。
まるで子供みたいな繭を、私は笑った。
「夕食は19時からだし、先にお風呂行ってきちゃおうか」
「そうだねー」と答えた繭のバッグから、スマホが鳴り響いた。
繭は寝ころんでいたベッドから飛び起きると、速攻でバッグからスマホを取り出す。



