「はい、ありがとうございます」
フロントマンは、クスッと苦笑いをし、彼と私にそれぞれカードキーを差し出した。
カードキーを受け取った私と彼は、なぜかバツ悪そうに顔を見合わせる。
そんな私の表情から、気まずさを読み取ってくれたのか、彼が繭の居る売店の方を見ながら先に話しかけてくれた。
「あちらの方と、お二人で旅行ですか?」
「はい。あなたも?」
「まぁ、そんなとこです。お先に」
彼は私よりも先に向きを変えると、エレベーターに向かい歩いて行った。
少しはにかんだ様な表情を彼が浮かべたと思ったのは、気のせいだったのだろうか。
繭を呼び寄せ、私はエレベーターに向かう。
丁度、ロビーから客室に向かうお客さんが数人ほど乗り込んでいる最中だったので、私達も便乗しようと繭を急かす。
「無理だよ、次にしようよ」
「声をかければ待っててくれるって」
諦めようとする繭のお尻を叩き、私は片手を挙げエレベーターの中の人達に向かい声をかけた。
「すいませーん、私達も乗りますっ」
後は自分たちで運びます。と仲居さんからバッグを受け取り、駆けだしたが静かにエレベーターの扉は閉まり始めた。



