……たぶん。
答えながらも、クライアントだった二階堂様の顔が脳裏に浮かぶ。
そういえば、二階堂様は婚約中のお相手が居ると話されていたっけ。
それなのに私を落とそうとしていたのだ。
危うく抱かれそうになった私は、二階堂様にとって「つまみ食い」だったという事になる。
「どうしたの? なにかあった?」
繭に顔を覗き込まれ、私は黙っていようとした出来事を口にしていた。
10分後には、繭に話したことを後悔したのだ。
「抱かれてみりゃよかったのに」
二階堂様のものになってみれば、世界が変わったかもしれないと言う繭に、開いた口が塞がらない。
仕事も貰えて、この先の援助もしてもらえるかもしれない。
未だ婚約中の身ならば、婚約者から彼を奪う事だってできたかもしれない。
もしも、奪う事が出来たのなら。
高額所得者の妻という、現代のシンデレラになれたかもしれないのに、と。
「馬鹿言わないでよ。そもそも、私は二階堂様の事はクライアントとしてしか見てなくて。断じて恋愛相手として見た事なんてない」
だから、彼の事を男性として好きだと思った事はなかった。と口にした私に、繭は冷静に言った。



