碧人の息遣いが耳元に聞こえている。

しっかりと、身体は碧人に抱きしめられていて。


私の心臓は、当然ドキドキしている。

こんな密着している状況では、碧人にも知られてしまっているのではないかと思い、余計にドキドキ感が増していた。


肩に碧人の手が置かれ、庇ってくれていた碧人が身体を離す。

そんな碧人を目で追う様に、私は碧人を見つめた。


頭から被っている模造紙は、碧人と私の姿を隠し。

二人だけの世界を作り上げている。



今、レイの姿は見えない。

完全に二人きり。

見つめ合っている事も、私達しか知らない。


碧人は、黙ったまま私の頬に手を添える。

触れられた私は、顔が火照っているのが分かる。


「ここ、紙で切れたかな」

「え?」

「頬っぺた。ちょっと切れてる」

「あ、大丈夫だよ。これくら……い」


答え終わらないうちに、碧人の唇が頬に触れていた。


それは、一瞬の出来事で。


気づいた時には、碧人の唇は離れていた。

私は、熱くなっている頬を手で押さえ、茫然と碧人の顔を見つめる。


「……なんだよ」

「なにって。こっちが聞きたいよ。今の……。なに?」

「止血だよ、止血! 深い意味なんかねぇよ」