繭に答え、私は手帳を閉じた。


その瞬間。

フワリと何かが舞ったような気がする。

同時に、トクン。と胸に感じる不思議な感覚。


「彼と別れたらさ、涼香ちゃんの会社の人を紹介してくれる?」

「いいけど。でもね、今の私は繭に男の世話なんかしてる場合じゃないのよ?」


そこんトコ、分かってます?

何年恋人が居ないと思ってるの?


「なんで? 職場に狙ってる人でもいるの?」

「いないけど。じゃあ、私も好きな人が欲しいな!とか言えば、私の言いたい事を分かってくれる?」

「作ればいいじゃん。いい男はあちこちに居るんだし」

「んー。でもさぁ……」


私の理想は、決して高いわけじゃない。

繭の言う様に、背が高くて、優しくて。

スポーツ万能で、人気者で。

彼女思いで、カッコ良くて、勉強もできる。

そんな条件を並べるような理想は無い。


ただ。


私だけを好きでいてくれる人。

いつまでも。

何があっても。

変わらずに、私を想ってくれる人がいい。


「それって、かなりイイ男だよー」なんて、繭に笑われたけど。

私の理想は、これに尽きる。

子供の頃から、これだけは譲れないこと。