「怜音の奴、マジでどうしたわけ?」


「私にもわからないの」



金曜日の放課後、大雅がわざわざ私の席までやって来た。


あまりにも長く学校を休んでいることに、いよいよただ事じゃないと察したらしい。



「あいつ、今になってグレ始めたとか?」


「大雅じゃないんだから」



わりと真剣にそんなことを言った大雅に、シラけた目を向ける。


すると「だよなぁ」と、大雅は小さく苦笑した。



「本当にどうしたんだろうな」


「メッセージの返信はすぐに来るんだけど、いつ学校に来られるのかを聞いても、はぐらかされてばっかりなんだよね」



さすがに2週間はおかしい。


何かあった、とか……?


でも、何が?


わからない。


でも、だからこそ知りたい。


れおのことが心配だった。



「私、今日れおの家に行ってみる。逢えるまで粘ってみるよ」


「俺も行く」


「はいはーい、あたしも!」


「や、やっちゃん……!いつの間に」


「えへ。いいよね、しずく?」


「も、もちろん」



有無を言わさない強力な目力でねじ伏せられた。


やっちゃんのお目当ては大雅なんだろう。


3人でいそいそと学校を出て、目指すはれおの家。


大雅と私はれおの家に行ったことがあるけど、やっちゃんはお初。


この場に大雅がいるからなのか、いつもはなんでもズバズバ言うやっちゃんがすごく静かだ。



「柳井さんって、そんなに静かだったっけ?もっと喋るイメージだったのに」


「え?いや、あの……なんか、緊張しちゃって。ごめんね」



頬を真っ赤に染めてタジタジのやっちゃん。


やっちゃんは実は、好きな人の前ではモジモジ系女子になるタイプだったんだ。


あは、可愛い。


なんだか、新鮮な一面を見ちゃったよ。