冗談……だよね?


れおがそんなことを言うなんて。


だけど、れおの表情は至って真剣で冗談を言っているようには見えない。


でも、だって。


キスだなんて……。



「頭打って、おかしくなった……?」


「俺はしずのことが好きだよ」



空耳かと思った。


れおの口からそんな言葉が飛び出すなんて、何かのまちがいだ。


そう思うのに、徐々に顔に熱が帯びて赤く染まっていく。


ううん、違うよ。


れおの言う『好き』は、私が思ってるような意味じゃない。


絶対に違う。


違う……。


何度も自分にそう言い聞かせる。


そうでもしないと、どうにかなってしまいそうだった。



「キスしたいくらい、しずのことが好きだ。それって、どういう意味で言ってるかわかる?」


「え、えっと……あの」



キスしたいくらい……好き?


私のことを……?


キス、したい……?


私と?


私のことが、好き、だから?


だから……れおはキス、なんて。


ありえないほど、パニックに陥っていた。


熱を含んだれおの瞳が、ジリジリと私の心を焼き付ける。



私も……私もれおのことが好きだよ。


そう言いたいのに、信じられない気持ちの方が強くて言葉が出て来ない。


恥ずかしくてパッと目をそらすと、後頭部に添えられていたれおの手の力がゆるんだ。


かと思えば、至近距離にあったれおの顔も私から離れて行く。