れおのことを誰よりも知ってるのは、この私。


耳が聞こえなくたって、れおへの気持ちは変わらない。


物心がついた時から、ずっと好きだったんだから。


世の中には色んな人がいるから、みんながみんな優しいわけじゃないことは知っている。


こんな風に、障害を持った人をバカにして笑う人もいるんだ。


……悔しくてたまらなかった。


ムカついてどうしようもなかった。


唯一の救いは、ギャルの声がれおには聞こえていなかったこと。


補聴器の電池が切れていてよかった。


ごめんね、れお。


れおは不便に思っていたかもしれないけど、私はホッとしてしまった。


優しいキミを、これ以上傷付けたくなかったの。


傷付いたり嫌な思いをするのは、私1人で十分だ。


だって、れおはもう十分傷付いてる。


その傷を半分、私が背負ってあげたいの。



「あー、彼氏がほしい!連れて歩くのに困らないような、最強なイケメンの彼氏が!」


「サエは面食いだもんね」


「まぁね。でも、さっきみたいな欠陥のある人はお断りだけど」


「あはは、確かに!」



高らかな嘲笑と、明らかにれおを差別する言葉にガマンが出来なくなった。


カッと頭に血が上って、気付くとテーブルを両手で思いっきり叩いていた。