相手を確かめたくて、必死に耳を澄ませる。



「どうして?あたし、桐生君の優しいところが好きなの。諦められないの!だから、お願いだよ」



今にも泣きそうになっている女子の声は、ドア一枚隔てた廊下に鮮明に響き渡った。


この声は、三木さんの声かな。


れおに聞こえやすいように、大きめの声で話しているんだろう。


思えば、告白の声も大きかった。



「何を言われても、ごめんとしか言いようがない。今はそんな事にかまけてる時間はないんだ」


「そんな事って……ひどい。せっかく勇気を振り絞って言ってるのに」


「ごめん。それでも、三木さんと付き合うなんてありえない」


「……っ」



キッパリ言い切るれおに、三木さんは押し黙った。


さすがにここまで言われたら、傷付くよね。


私だってそうだ。


ここまでれおにキッパリ言い切られたら、かなり傷付く。


でも、それでも。


三木さんの告白を断ってくれて、ホッとしている私がいた。



「……わかった。困らせてごめん」


「俺の方こそ、ごめん」


「いいよ、桐生君は何も悪くないもん」



同じように振られるかもしれないというのに、ホッとしてる私は最低だ。