もちろんケーキなんて食べられるはずがなく、ドキドキしすぎた鼓動を落ち着かせるのにいっぱいいっぱいだった。
れおの部屋にはイタリアから取り寄せた革張りの立派なソファーとガラステーブルがあって、優雅にそこに腰掛けるれおの向かいに、私もちょこんと腰掛けた。
「あ、そうだ」
すると、何かを思い出したかのようにれおが口を開く。
れおはガラステーブルの下の台に手を伸ばし、小さな紙袋を取り出した。
その紙袋は綺麗にラッピングされており、取っ手の部分にはピンクのリボンが結んである。
「クリスマスプレゼント」
微笑みながら私にそれを差し出すれお。
「え?私に……?」
「うん」
「ウ、ウソ……だって」
こんなの、初めてなんだけど。
まさかの展開に呆然としてしまう。
お互いの誕生日にはプレゼントを渡していたけど、クリスマスにもらったのは初めて。
「私、何も用意してないよ」
「いいよ、俺が渡したかっただけだから」
「ありがとう。嬉しい!」
ヤバい、涙が出そう。
れおからの初めてのクリスマスプレゼントだ。
「開けてみて」
「うん!」
紙袋を受け取って、早速中身を取り出す。
中には木箱が入っていて、表面には私でも知ってる高級ブランドのロゴが印刷されていた。
ワクワクしながら木箱を開けると、出て来たのはハートの形をした小さな小瓶。
「香水……?」
「うん。しず、俺の部屋の匂いが好きだって言ってたから」
私が好きだって言ったから、わざわざ用意してくれたの?
特注品だから、わざわざ取り寄せてくれたってことだよね?
私の、ために。
「あ、ありがとう……嬉しい」
「どういたしまして」
「もったいなさすぎて使えないよ」
「使ってもらわなきゃ、意味ないんだけど」
目を潤ませる私を見て、れおが笑った。
ううん、絶対に使えない。
「中身がなくなったら補充することも可能だから、俺や父さんや母さんに言ってくれればいいよ。ちなみに、その瓶は俺がデザインしたものなんだ」
「ウソ、れおが?ハート?」
「しずをイメージしてみた」
「私って、ハートのイメージなんだ」
薄ピンク色に透けてて、かなり可愛いハートの形をしている小瓶。
れおの中の私のイメージって、かなり純粋な感じなのかな。
それはそれで嬉しい。
「大事にするね!」
私はれおに向かって微笑んだ。



