カナさんはやり残した仕事があると言って書斎に消えてしまい、私はそのままれおの部屋へ向かった。
れおの部屋は3階の奥にあって、そこに行くまでに結構時間がかかる。
「しず」
「あ、れお!」
部屋のドアを開けようとすると、先に中から開けられてしまい、そこかられおが笑顔を覗かせた。
お昼過ぎだというのに珍しくスウェット姿で、髪の毛には寝ぐせがついている。
もしかして、寝てた?
「窓からしずと父さんの姿が見えた。入って」
「うん」
部屋に入ると爽やかなスカッシュ系の香りがした。
れおの部屋はいつもこの香りで溢れていて、小さい頃からずっと変わっていない。
フランスから取り寄せているというオーダーメイドの香水で、マスカットをベースにした爽やかなスカッシュの香り。
ここに来ると落ち着くのは、もしかしたら香水のおかげなのかな。
「れお、寝てた?」
髪の毛の隙間から覗くれおの右耳には、補聴器は見当たらない。
なので、ベッドを指差しながらジェスチャーを加えて聞いてみた。
「うん。さっきまで」
「やっぱり?寝ぐせがついてるよ」
ベッドに腰掛けたれおの髪の毛に手を伸ばす。
サラサラの髪の毛からは、シャンプーのいい香りがした。
寝ぐせ部分を直そうとしてみるけど、完全に形がついてしまっているからなかなか直らない。



