ガラにもなく塾にも通っているようで、大雅の変わりようには驚かされた。
伊達メガネまでかけて真面目に見せ、先日までアプリコットブラウンだった髪は磯のりのように真っ黒。
どうしてランクが上の明倫学園を目指しているのかは聞いてないけど、なんとなく予想はついている。
それでも俺は、大雅のことを心から応援してる。
「ねぇ、れお。この問題なんだけど」
教室に着くや否や、参考書を手にしたしずが俺の元にやって来た。
しずも頑張ってるから、俺も頑張る。
離れるのは寂しいけど、自分が決めたことだから泣きごとは言わない。
「どの問題?」
「これなんだけど」
しずの柔らかな髪が頬に当たる。
至近距離にあるしずの顔に、ドキッと胸が高鳴った。
ドキドキしているのがバレないように平静を装って参考書を覗き込む。
正直、問題なんて頭に入って来なかった。
「どう?わかる?」
しずは俺がドキドキしているのを知らずに、その大きな目を潤ませて俺を見上げる。
薄ピンク色の唇と、ベージュのセーターの袖から見え隠れする細長い指。
いつの間にこんなに女子っぽく……可愛くなったんだろう。
この前まであどけない笑顔で笑ってたというのに、いつの間に。