12月に入った。
急激に冷え込み、寒がりの俺にはマフラーと手袋が欠かせない。
吹きつける風が冷たいというか、痛くて学校に着いた頃には顔の感覚がなくなっていた。
朝、昇降口で履き替えていると背中にドンッと強い衝撃が走った。
「よう、怜音!」
バランスを崩した俺の耳に届いたのは、機械混じりの陽気な声。
俺のことを怜音と呼ぶのは親友の大雅しかいない。
こいつの声は大きくてよく通るから、はっきりと俺の耳にも届く。
ずっと一緒にバスケをやって来た仲間であり、親友であり、大雅は気心が許せる数少ないうちの1人だ。
少しガサツなところがあるけど、それでもこいつのことは嫌いじゃない。
ニヒヒとイタズラッ子のように白い歯を出して笑う大雅を見ていたら、俺まで自然と笑顔になれる。
「英語でちょっとわかんねーとこがあってさぁ。あとで教えてくんねー?」
「いいけど、大雅がこんなに早く来るなんて珍しいな」
「勉強でわかんねーとこをお前に聞こうと思って。明倫学園未だにB判定だし、ちょっと焦ってんだよ」
お調子者で勉強なんて大嫌いだと言っていた大雅も、ちゃんと受験生をやっているらしい。