コロコロ表情が変わるしずといると、飽きることがないから楽しい。
「れおは人混みとか好きじゃないでしょ?騒音がひどいところは、頭が痛くなるって前に言ってたし。それなら、静かな場所の方がいいのかなと思って」
はっきりとは聞き取れなかったけど、多分そんな風に言ったんだと思う。
しずはいつも俺のことを気にかけてくれるけど、その優しさは嬉しくもあって時々切なくもある。
「大丈夫だよ、補聴器にも大分慣れたし。騒音がひどいところは、補聴器なしで歩くから。しずが手を繋いでくれてたら大丈夫」
「ほんと?ムリしてない?」
「してない。しずが行きたいところに付き合うって言っただろ」
「うん……!ありがとう」
そこでようやくしずは安心したように笑った。
音のない世界。
それでも、キミがいてくれる。
それだけで、俺はこの世界も悪くないってそう思えるんだ。
『れお!』
いつかのしずの声が鮮明に思い出される。
補聴器で聞くしずの声とは違って、機械混じりの変な声じゃない。
ちゃんとしたしずの声だ。
その声はしっかり耳に焼き付いている。
目を閉じると浮かんで来るしずの声。
ツラいことがあっても、しずのことを思い出して頑張るから。
しずには心から笑っていてほしい。



