プクッと頬を膨らませる私を見て、れおが苦笑する。


猫のように大きくて真ん丸い瞳が、細く弧を描いた。


掴まれた腕が熱を帯びたようにジンジン熱い。


れおは0歳の頃にモデル事務所にスカウトされたほど、それはそれは整った顔立ちをしている。


今でも、声をかけられたりすることがあるらしい。


でもね、私は反対。


だって、れおがモデルになったらたちまち人気が出ちゃうに決まってる。


そんなの……やだ。


物心がついた時からずっと、私はれおが好きだった。


一緒にいてこんなにドキドキするのは、れおだけだよ。


だけど、れおはきっと私のことを幼なじみ以上には思っていないと思う。


掴まれた腕をそのままに、私はれおが寝ているベッドの横に大の字で転がった。


キングサイズのベッドに2人並んで寝転んでも、狭くはなくまだ余裕がある。



「しず、まだスネてる?」


「ううん、もう直った。っていうか、たっぷりくすぐったからスッキリした」



れおの方に体を向け、ゆっくり口を開く。


ゆっくり話すことでしか、私の声はれおに届かない。


耳に付けている補聴器と、唇の動きかられおは言葉を読み取るのだ。


向き合っていると急に恥ずかしさが増して目をそらす。


ドキドキと高鳴る鼓動。


頬が熱い。



20畳以上もあるれおの広い部屋は、あまり物が置かれていなくて殺風景。


壁に飾られたペガサスの油絵はおばさんの趣味で、れおは気に入らないみたいだけど、カラフルだから私は結構気に入っていたりする。