「れおは甘い物が苦手だもんね。絶対人生損してるよ」
「チョコとか、この世の食べ物じゃないだろ」
「なに言ってんの。私の中で首位を争う食べ物なのにー!」
「はは、首位って」
「いいじゃん、それほど好きってことだよ」
「ほら、ココア。あったかいうちに飲んで」
「わ、ありがとう」
ペットボトルのココアを受け取りフタを開けると、独特の甘い匂いが漂って来た。
れおはブラックの缶コーヒーを飲もうとしている。
苦いから私は飲めないけど、れおはブラックが好きでよく飲んでいる。
「ん?ブラック飲みたいの?」
じっと見つめていると、れおが私の前に缶を差し出して来た。
飲めないのを知っててそう聞いて来るれおは、イジワルな笑みを浮かべている。
「いらないよ、苦いもん」
「お子ちゃま」
「うるさい」
わざとらしく頬を膨らませるとクスクス笑われた。
何気ないささいなやり取りが、すごく幸せ。
あとどれくらい、こうしていられるんだろう。
そんなことを考えると、寂しくて胸が張り裂けそうになる。
あと半年もしないうちに離れ離れになるなんて、まだ実感がわかないよ。



