「しず?」
「え?」
「ボーッとして、どうかした?」
「べ、別に。なんでもない」
目の前で目を丸くしながら首を傾げるれおは、本当に罪な人だ。
こんなにもドキドキさせといて、微塵もそれをわかってないなんて。
「しずの好きなココアとお菓子買って来たから、一緒に食べよう」
「うん……ありがとう。ちょうど、お腹が空いた頃だった」
「だと思った」
コタツのテーブルの上に散乱した教科書や参考書やシャーペン類を片付け、れおが買って来てくれたココアやお菓子をどっさり並べる。
「わぁ、チョコばっかり」
夏のチョコはベタベタしてるから嫌いだけど、冬のチョコは大好き。
特に、あのパキッていう感触が好きなんだよね。
勉強のあとの糖分補給はチョコに限る。
「これ、好きだって言ってたから」
「あは、好きだけど、同じの何個もいらないよー!」
「しずなら、これくらいは食べるかと思って」
「なにそれ、失礼ー。私、そんなに大食いじゃないんですけど」
なんて言いながら、チョコをひとつ口に入れた。
うーん、甘くて美味しい。
やっぱり、疲れた体と頭にはチョコが一番。
「れおは食べないの?」
ジェスチャーを加えて話すのは、もう当たり前のようになった。
声を聞き取りにくいれおに伝わりやすくするため、そうした方がいいとお母さんから教わったの。
それ以来、私は出来るだけジェスチャーを加えて話すようにしてる。
「俺は、しずが美味しそうに食べてるのを見てるだけで満足だから」
「とかなんとか言って、本当は甘い物が嫌いなだけでしょ」
「はは、バレた?」
れおの屈託のない笑顔が好き。
そばにいると、心が陽だまりみたいに温かくなる。



