「急に来てごめん」
ドアの向こうから現れたれおの優しい笑顔に、胸が締め付けられる。
休日に会うのは本当に久しぶりだから、ものすごく嬉しい。
しかも、れおの方から会いに来てくれるなんて。
「ううん、大丈夫だよ。あ、入って入って!」
私はれおの手を取って中へ引き入れた。
お屋敷みたいに大きなれおの家と違って狭いし汚ないけど、れおは私の家の方が落ち着くと言ってくれる。
「おばさんは?」
「今日は日勤だから、夕方にならないと帰って来ないよ」
「そっか。母さんがみかん持ってけって」
「わぁ、ありがとう!れおんちのみかん、私も好き」
「うん、だから多めに持って来た」
れおが差し出してくれた袋に飛びつく。
桐生グループで取り扱ってる高級みかんは、ジューシーで甘くてとっても美味しいの。
冬になるとたくさんおすそ分けしてくれるから、寒いのも案外嫌いじゃなかったりする。
「あ、もしかしてみかん届けに来てくれただけ?帰って勉強する?」
思わず中に誘ってしまったけど、考えてみたらそうだよね。
受験生だってことをすっかり忘れてた。
「ううん。みかんはついでで、しずの顔を見に来たってのがメインだから」
「……っ」
れおは相変わらず、爽やかに笑いながら余裕たっぷりの表情で、ドキッとさせるようなことを言ってくれる。
無自覚って一番ズルいと思うんだ。



