「わかった」
れおは真面目だから断られると思っていたけど、意外にもあっさり了承してくれた。
掴まれた腕が熱を持ったように熱くて、ドキドキが収まらない。
中庭に着くまでの間、れおは時々私を振り返っては口元を緩めて笑ってくれた。
眉が垂れ下がった悲しげな笑顔。
もう、完全に私の負けだ。
れお、私ね……れおのそんな笑顔は見たくない。
キミには心から笑っていてほしいから、そのためなら私はなんだってするよ。
たとえ離れ離れになろうとも、れおが笑っていてくれるならそれでいい。
木陰にあるベンチに並んで腰掛け、れおの腕を引っ張る。
今は補聴器を付けているから、できるだけれおの右耳に唇を寄せた。
「れお……ごめんね」
「ごめんって、なにが?」
わけがわからないといった様子で、キョトンとするれお。
「勝手なことを言って、れおを困らせちゃったから。私、れおと離れ離れになるのが嫌だった。でもね……」
でも、いつまでもれおに甘えるのはやめる。
「今は応援してる。星ヶ崎高校に行きたいんでしょ?」
「…………」
れおは私から視線を外すと、しばらくの間沈黙を貫いた。
変な緊張が走って全身が強張る。