れおは私をドキドキさせる天才だ。
無意識にドキドキさせるようなことをして、私を離れられなくさせる。
ズルいよ、ドキドキしてるのが私だけなんて。
れおも同じようにドキドキしてほしいだなんて、私のワガママかな。
赤くなった顔を隠すようにうつむく。
「ちょうど終わったところだから、一緒に教室に戻ろうぜ」
れおの優しい声が耳に届いた。
同時に手首をグッと掴まれ、引っ張られる。
私はれおに引っ張られるがまま、体育館の入口へと近付いた。
「えー、桐生先輩行っちゃやだ!」
「っていうか、あの人誰?彼女?」
「彼女はいないってウワサだけど」
ギャラリーからの悪意のこもった視線を、背中にビシビシ感じる。
恐ろしくて振り返ることが出来ず、うつむき気味のまま歩いた。
れおには女の子たちの声が聞こえていないみたいだからよかったけど、後輩からもこんなに人気があるなんて知らなかった。
「れお、待って」
「?」
れおの腕を反対側の手で掴むと、れおはゆっくり私を振り返った。
「次の授業、サボろう。中庭に行こうよ」
「中庭?」
一部だけ聞き取れなかったのか、確認するように私に問うれお。
私は小さく頷いて返事をした。