「キャー、桐生先輩カッコいいー!」
耳をつんざく黄色い声にハッとする。
辺りを見渡せば、いつの間にか体育館にはギャラリーがたくさん集まっていた。
1人ポツンと三角座りをする私は、完全に蚊帳の外状態。
目をハートマークにしてれおに声援を送る後輩を見て、複雑な気分だった。
やっぱり……れおはモテるよね。
私なんて、相手にされっこない。
なんだか気分が重くなり、さっきまでれおと話したいと思っていたのに、徐々にその気持ちが薄れて来た。
もう戻ろうかな。
れおは私に気付いていないだろうし、何を話せばいいかわからないから。
私が居なくなったって、誰もなんとも思わない。
私はそっと立ち上がり、体育館をあとにしようとした。
「しず!」
だけど、背後から突然名前を呼ばれて自然と足が止まってしまう。
振り返らなくても、その声の主が誰なのか知っていた。
私の大好きな人の声だったから。
「なんで戻ろうとしてんの?しずが見てたから、頑張ってシュート決めたのに」
背後から走って来たれおは、私の前に回り込んで顔を覗き込んだ。
目の前に見える整った顔にドキドキが止まらない。



