「カン違いしてるみたいだけど。藤里君は……彼氏じゃないよ」


「え?」


「ただの同期だから」


「……マジ?」


コクンと小さく頷く。


すると、れおの横顔がみるみるうちにほころんでいった。


「なんだ、焦って損した」


「れおの早とちり」


「ごめん」


シュンと肩を落とすれお。


その姿があまりにも可愛くて、思わず笑ってしまった。


「笑うなよ、バカ」


「あは、だって」


「これから時間ある?」


「……うん」



れおの運転する車で、夜景が見える展望台まで連れて来られた。


展望台のベンチに並んで座り、そのままれおに肩を引き寄せられる。


凍えるくらい寒いけど、れおとくっついていると不思議なことにあったかい。


「しず」


「ん?」


ずっと触れたかった温もりがここにある。


大好きなれおの横顔。



「今まで連絡しなくてごめん。こっちに帰って来て、ちゃんとしてから逢いに行こうと思ってた」


「…………」


「中途半端なまま逢いに行っても、カッコつかないだろ?こっちに帰って来て半年経ったけど、俺はまだまだ一人前じゃない」



胸に熱いものが溢れて涙が滲んだ。


離れていた8年間のことが蘇って、胸が苦しい。


せっかく逢えたのに、もう離れるのは嫌だよ。



「けど、俺ももう限界。これ以上離れんのはムリだから……これからは絶対に離さないって約束する。だから……俺と……俺と」



目の前が涙でボヤける。


展望台から覗く夜景がすごく綺麗だった。



「結婚して下さい」



信じられない気持ちでいっぱいだったけど、嬉し涙がとめどなく溢れた。


ずっと夢見ていたことが現実になった。


ツラいことも、悲しいこともいっぱいあったけどーー。


ずっとずっと、キミを好きでいてよかったって、今なら心からそう思える。



涙を拭うと、れおに向かって大きく頷いてみせた。



そしてーー手話で伝える。





『ずっと、キミが好きでした。』





『これから先も大好きだよ』





『ずっと、一緒にいて下さい』




「しず、俺……もう待てないから。今から俺んち来る?」


「……うん」


「あの、さ。前にも言ったけど、意味わかってる?」


「うん、わかってるよ。8年も待ってくれてありがとう……」


「俺も……待たせてごめん。けど、これからはそれ以上に幸せにするって約束する」



れお……ありがとう。


キミを好きでよかった。


だから、これからもこんな私をよろしくね。