逢えて嬉しいはずなのに、戸惑っている私もいた。


だって、いきなり過ぎて未だに信じられない。


「月城!」


「ふ、藤里君。来てくれたの?」


「ああ。ほら、カバン」


「……ありがとう」


「それから、もう帰っていいって校長が言ってたぞ」


「ホント?」


「ああ。だから、送ってーー」


「いい、俺が送る。行くぞ、しず」


「ちょ、れお……っ」


え?


なに、いきなり。


腕をグイグイ引っ張られ、その場から遠ざかって行く。


藤里君はそんな私たちを呆然と見ていた。


「れ、れお……!どこまで行くの?」


病院を出てもうずいぶん歩いた気がする。


「つーか、あんな男がいいのかよ?追いかけても来ないし」


「あんな男って……?」


なぜか怒っているらしい整ったその顔。


れおだ。


正真正銘のれおだ。


「さっきの男。彼氏なんだろ?目の前でしずを連れ去ったのに、追いかけて来ないってどういうことだよ」


「か、彼氏……?」


「言っただろ。待ってなくてもいいって。その代わり、今度は全力で奪いに行くって」


フワッと香る懐かしいれおの匂いに、不意に涙が込み上げた。