「小百合ちゃんでダメなら、私なんてますますダメだよ」
「そんなの、告白してみなきゃわかんないでしょ!しずくは桐生君と幼なじみなんだし、両想いっていう可能性も大アリじゃん」
残念だけどね、やっちゃん。
その可能性はきっとないよ。
れおの優しさは私だけじゃなくて、みんなにも平等で差がない。
私だけが特別だなんて、そんな風には思えないんだ。
「まぁそう焦らずに、卒業式までに告白することを目標にしてみたら?」
「…………」
なにも言い返せなかった。
卒業式まであと5ヶ月と少し。
そうしたら、れおと離れ離れになってしまう。
それまでに告白なんて、できっこないよ。
「怜音ー、バスケしようぜ」
昼休みに入り、教室内はガヤガヤ騒がしさを増していく。
そんな中で聞こえたれおの名前に、鼓動がドキッと高鳴った。
れおのことを怜音と呼ぶのは、このクラスの男子でれおの親友の相模 大雅(さがみ たいが)だけ。
大雅とれおは幼稚園の頃からの仲で、小学校の時は一緒にミニバスのチームにも入っていた。
大雅はれおが遠くの高校に行くことを知っているのかな。
仲良く連れ立って教室を出て行く2人の背中を、ぼんやり見つめる。
……れお。
何気なく心の中で名前を呼ぶと、突然れおが振り返った。



