「本当は行きたいんでしょ?医学を学びたいって、前に言ってたじゃん!」
私が聞きたかったことを女の子に言われてしまった。
医学を学びたい……。
そうなの?
私は何も聞いてないよ、れお。
知らなかったよ。
れおがそんな風に考えていたなんて。
「どうしても泣かせたくない大切な奴がいるから、俺は地元に残る」
れおの淡々とした声が胸に突き刺さった。
泣かせたくない……大切な奴。
それって……。
なんだか胸の辺りがギュッと痛くなった。
「なにそれ!そんなことで夢を諦めるの?」
女の子の涙声を聞いているのがすごくツラい。
「諦めるっていうか、俺はただ……そいつの泣き顔を二度と見たくないだけだから、そのためならなんだってする」
「…………」
れお……。
それって……私のこと?
初めて聞いたれおの気持ち。
れおは……私のために夢を諦めようとしているの?
そんなの……やだよ。
「キャー、危ない!」
「車が突っ込んで来るぞ!」
ーーキキィー
ふと顔を上げると、車道の方からクラクションの音がけたたましく響いた。
れおは車道に背中を向けており、女の子も騒ぎに気付いていない。
車はどんどん2人の元に近付いて行く。
「れおっ……!」
気が付くと無意識に足が動いていた。