バカ。
バカ……。
れおのバカ!
溢れてくる涙を指で拭いながら横断歩道を駆け抜ける。
胸が痛くて苦しくて、うまく息が出来ない。
私のワガママだって頭ではわかるのに、心が追いつかなかった。
「はぁはぁ」
家まで猛ダッシュしたせいか、呼吸が荒くなる。
胸がズキズキ痛むのは走ったせいでもなんでもなく、原因はよくわかってる。
れおの……バカ。
「おかえり。どうしたの?そんなに慌てて」
慌ただしく帰って来た私に気付き、お母さんが襖から顔を出した。
「別に……なんでもないよ」
泣いたのがバレたくなくて、うつむきながらお母さんの横を通り過ぎる。
「今日はれお君の家に行かないの?珍しいわね、こんなに早いなんて」
「……行かない。今日は家にいる」
「そう。お母さん、夜勤だから夕飯用意しておくわね」
「うん……」
お母さんとの会話を終えると、一番奥にある自分の部屋に向かった。
昔はれおの家の斜め向かいの一戸建てに住んでいたけど、両親の離婚後はお母さんと小さなアパートに引っ越した。
前に住んでた家から1kmほどしか離れていないオンボロアパート。
だけど、2DKのアパートは2人で暮らす分には申し分ない広さだ。
看護師のお母さんとの2人暮らしは離婚前に比べたら快適だけど、ひとりで過ごす時間が多いから時々寂しかったりもする。
そんな時はいつも、れおがそばにいてくれた。



