どこかから犬の遠吠えのようなものまで聞こえて、ますます怖くなった。
でも、負けない。
そろりと足を動かして、公園内を進む。
今日は風がほとんど吹いていないから、余計にシーンとしていて不気味に思えた。
昔2人でよく遊んだブランコのそばまで来た時、街灯に照らされている人影が目に入った。
その人はブランコに腰掛け、うつむき気味にぼんやりしている。
後ろ姿だけど、一目見ただけで誰なのかがわかってしまった。
一気に涙が溢れて、思いっきり足を前に踏み出す。
れお……。
れお……っ!
無意識にその背中に駆け寄り、気付くと後ろからその大きな背中を抱き締めていた。
ブランコに座っているれおの肩に顎が当たって、そこに顔を埋める形になる。
れおの体がビクッと揺れて、顔を横に向けたのが気配でわかった。
「しず……?なんで?」
「れおの……バカッ」
「しず……?泣いてんの?」
「泣いて……ないっ」
フルフルと大きく首を横に振る。
大好きなスカッシュ系の香りに、懐かしさが込み上げて胸が締め付けられる。
それと同時に、あの頃から一ミリも変わっていない自分の気持ちに改めて気付かされた。
「しず、苦しいから。ちょっと離れて」
「やだっ!」
「しず」
頑なに首を振り続ける私の耳に、優しくて穏やかな声が届く。
大好きだったれおの穏やかな声に、次第にドキドキが増して行く。
やっぱり私は、れおが好き。
大好き……。
「全部……聞いたよ。サクさんから」
「ごめん……しず。なんて言ってるか、わからないんだ」
れおの右耳にあるはずの補聴器が外されているのは、電池が切れたからでも、故障しているからでもない。