「なにビックリしてるの?」


「だ、だって、可愛いなんて……言われたことない」



言われ慣れていないせいか、変に緊張して妙に照れくさくなった。


私の言葉に目を真ん丸くした加川さんは、瞬きを数回繰り返すと妙にかしこまった声で「マジ?」と聞いて来た。



「うん、マジ……です」


「もったいない!ってことは、今まで彼氏がいたことないの?」


「……うん」


「好きな人は?」


「好きな人はいた……かな」



いたと言うよりも、いるって言った方が正しいけど。


でも今は、自分の気持ちがよくわからない。


れおのことを考えると、胸が苦しくてツラくてどうしようもなくなってしまう。


それって、まだ未練があるからなのかな。


肩を震わせて泣いていたれおの姿が、頭に焼き付いて離れない。


私の胸の中には、れおの存在が今も色濃く残っている。


今頃、どうしてるかな。


逢いたい……声が聞きたい。


でも、もう逢えない。


逢いに行けるわけがない。


だから、苦しくてツラくて……切ない。


でも、逢いたい。


そんな身勝手な感情が胸の中に渦巻いて、もう考えることさえも嫌で、現実から逃げてしまっている。


本当に情けないったらないよね。


あの時……なんでれおは泣いてたんだろう。