どんなにツラくても、どんなに苦しくても、明けない夜はないんだと知った。


卒業式の日に置き去りにして来たままの心と、過ぎて行く時間の中で変わりゆく現実に、うまく溶け込めずにいる。


楽しみにしていた高校生活がどこか色褪せて見えてしまっているのも、きっとそのせい。


れおのいない教室は、こんなにも色がない。



「月城さん!今日の帰り、みんなでカラオケに行かない?」


「え、カラオケ?」


「うん。みんなで親睦を深めましょうってことで」


「私も、行っていいの?」


「もちろんだよ。それとさー、男子たちも誘いたいんだけど、月城さんって相模君と仲良いよね?あの辺の男子を誘ってみてくれないかな?」


「あ……うん。わかった」


「ありがとう!お願いね!」



小さく頷くと、クラスのリーダー格の羽山(はやま)さんは、にっこり笑って私に手を振り、元いた女子の輪の中に戻って行った。



高校生活が始まって2週間。


それなりに話せる子は出来たけど、友達と呼べるような子はまだいない。


嫌われたくないから、面白くもないのに周りに合わせて笑ってるだけ。


私の愛想笑いに気付く人はいないから、深く踏み込まれなくてちょうどいい。


周りに合わせておけば、たいがいのことはうまくいく。