「今日で最後なんだから、言いたいこと言わないと後悔するぞ」



大雅は真剣な表情で私の顔を覗き込んだ。


澄んだ大きな瞳と、整ったその顔立ち。


身長も、また少し伸びた気がする。


れおと同じくらいか、それより少し高いくらいかな。


大雅はこうやって、ごくたまに真面目なことを言う。



「言いたいこと、ね。あるにはあるけど……」


「なんだよ?はっきりしろよ、はっきり」


「うるさいなぁ。そういう大雅はどうなの?誰かに言い残したこととか、ないわけ?」


「あ、あるわけねーだろうが。バーカ」



ムッ。


バカバカって。


大雅って、昔から私にだけイジワルなんだよね。


なぜか挙動不審に私をチラチラ見つめる大雅の顔は、真っ赤だった。



「ふーん、そう。私は自分で解決するから、ご心配なく」


「悪い、ウソついた」


「え?」


「言い残したこと、本当はあるんだ。けど、言わねーって決めてるから」


「なに、それ。それなのに、私には言えっておかしくない?」


「おかしくねーし。しずは言えるだろ?」


「え?」



私はって……どういう意味?


わけがわからない。


だけど、大雅があまりにも寂しそうな瞳で私を見るから、それ以上責める気になれなかった。