3月某日ーー。


卒業式の日を迎えた。


気温の低い日が続いているせいか、門出を祝ってくれるはずの桜はまだ咲いていない。


校庭には立派な桜の木がたくさん植えられているのに、殺風景で寂しげな景色だった。



「しずく、写真撮ろ!」



教室に行くと、ブレザーの胸ポケットに『卒業おめでとう』の文字が書かれたバラのコサージュを付けたやっちゃんが笑顔で駆け寄って来た。


今日でみんなともお別れか。


……寂しいな。


色々あったけど、なんだかんだで楽しい3年間だった。



「ほら、早く早く!ミサ達も、しずくと一緒に撮りたいって言ってるから!」


「あ、うん」



女子だけで集まっている輪の中に混ざって、みんなで写真を撮った。


この教室でこうやってみんなと過ごすのも、これが最後。


黒板には『卒業おめでとう』の文字がデカデカと書かれていて、感慨深くしみじみした気持ちになった。



「しずく!一生のお願い!相模君とツーショットで写真撮りたいんだけど」



やっちゃんはすがるような目で私を見つめる。



「わかった。声かけたらいいの?」


「うん、お願い!」



やっちゃんは大雅に告白はしないようだけど、初恋の思い出として写真に収めておきたいらしい。