花奈 ~15日生きた君へ~

父が私を大切に思うのにもまた、理由がある。
私に母がいないからだ。

私が小1の時両親は離婚した。
離婚を切り出したのは母のほうだった。
離婚の理由にはもちろん私が関係していた。
私は生後間もない頃から慢性的な喘息を持っている。

「花代が入院する度、付きっきりで看病するのが心身共に苦痛」
「花代はただの負債。金と時間と労力だけ持っていかれる」

だから母はそんな理由で離婚を希望した。
簡単に言うと私を棄てたいからってことだった。

母のその言葉を聞いた時、普段優しい父が人相を変えて怒った。
母を玄関まで引きずり回し、頬にビンタした。
頬を押さえて泣く母に向かって、父はこう怒鳴った。

「お前がそんなひどい女だと思わなかった。俺は花代のことを絶対に離さない。これからは俺が1人で花代を守る」

だから私は父のために生きている。
父の最期を看取るまで絶対に死にたくない。
なので私はこの家と、そして父と縁を切れない。