「ふーん、わたしなんかに欲情したんだ」

「……っるせ」



こいつ、どこまでオレのこと煽るつもりなんだ。

相変わらず動揺することもなく、どこまでも余裕で。オレは余裕なんてなくて。

このまま無理矢理襲ってしまいたい気持ちと、こんなのは良くないと思う気持ちと。だけどやっぱりこのままじゃ嫌だという気持ちと。

そんなオレの気持ちなんて、ずっと一緒にいた幼なじみのこいつにはお見通しなんだろう。
続いた言葉にオレはもうこいつに一生敵わないと思った。



「べつにしてもいいけど、アイス溶けちゃうからそっち優先ね」

「え、いいの……?」



きょとん、と目を瞬かせる。

途端、緩んだオレの腕から逃れたこいつは溶けかけのアイスを器用に食べ進めながら、



「うん、だってわたし、あんたのこと好きだもん」



そう言って、微かに頬を染めた。
それを見てオレもこいつ以上に真っ赤になる。



「お、オレ、も……っ!」



今年の夏はもっと暑くなりそうだ。