カラスがうつむいて念じている
ような姿になると、自動車が強い
力で押さえつけられるようにきし
みだし車体が低くなっていった。
　ミユは話を続けた。
「このまま放っておけば地球全体
が地殻変動を起こし、爆発すれば
宇宙にどんな悪影響がでるか予測
できない」
「爆発って、地球が吹っ飛ぶって
こと？本当なの？」
「そうならないようにするために
周作に頼みがある」
「いやー、でもな、ちょっと僕
じゃ」
「難しいことじゃない。これから
カラスがもっと増え、行動を起こ
す。それを邪魔せず見守って欲し
い」
「それだけ？」
「そう、だけど人が大勢死ぬ。助
けることはできない。カラスを殺
そうとしても死ぬ。地球の誰かが
このことを知っていなければ、星
間盟約が破棄され、宇宙の秩序が
保てなくなる」
「それは僕じゃなくっても。誰か
偉い人紹介するよ」
「残念だけど地球にはいない。周
作は武力を使えない。それに地震
の起きるこの地に居て、カラスの
生態を理由にカモフラージュでき
る。だから選ばれた」
「そんなの？でも僕が死ぬかもし
れないじゃん」
「周作が生き残る保障はできない
が、カラスの行動を邪魔しないよ
うにすれば、助かる可能性は高く
なる」
　周作は頭で理解しようとしたが
すぐにあきらめた。
「…で、君はなんなの？」
「ミユは周作の記憶から合成した
イメージ」
「イメージっていっても、触れる
よ」
　周作がミユに触ると確かに感触
がある。
　ベタベタと触っていると、カラ
スが一斉に飛び立ち、ミユの体が
ディスプレイに映し出された映像
のように透きとおり、消えていっ
た。
　それとともに低くなっていた自
動車の車体が反発し、周作は飛び
上がって天井に頭をぶつけた。
　それから間もなくミユの言った
とおりカラスが増え、異常行動が
次々に起こった。