行村くんから私へと、 視線を移した春人くんが 柔らかく笑う。 そして杖をついていない 空いている左手で 私の右手を握った。 幼なじみの頃には あり得なかった距離感。 私も 男子にしては華奢なその手を 壊さないように 優しく包むように握り返す。 うん、幸せ。 天使みたいに綺麗で、優しい恋人。 これ以上望むものなんてないよ。 行村くんを望む理由なんて、ないよ。