「でさ、佳祐(けいすけ)ったらそのまま私の部屋で寝ちゃってね?」
「うーん……」
「怒ったらうるさいって言って私の足蹴ったりしてさ」


 弾むような高い声で愚痴を垂れるのは私の幼なじみである前原 弥生(まえはらやよい)。ちなみに佳祐っていうのは同じく幼なじみの岸田 佳祐(きしだけいすけ)。私たちは幼稚園の時からの腐れ縁で高校生になってからも未だ同じ学校に通っている仲良し3人組である。
 弥生と佳祐は互いの母親が高校時代の親友であった事から家を行き来するほど交流が深いらしい。私も中学までは家が近かったのだけど途中で引っ越しをしてしまってからは佳祐の家にはほとんど寄り付かなくなった。と、まあ私達の幼なじみ事情はそこらへんにしておくとして。
 私は目の前の弥生を改めてまじまじと見つめていた。


「ねえ、汐里聞いてる?」
「ん?うんうん聞いてるよー」
「嘘だ、聞いてなかったでしょ?もー佳祐も汐里も全然相手にしてくれないんだからー」
「ごめんごめん」
「何かあったの?」
「いや?べつにー。それより佳祐来たら一発入れてやったらいいじゃん」
「やっぱそうするしかないか。よし、ストレッチしとこ」


 そう言ってはりきって準備運動をし始める弥生。緩く巻かれた毛先が動く度にふわりと揺れる。
 華奢(きゃしゃ)なウエスト、くりくりの瞳、長い睫毛(まつげ)、綺麗な唇。どこをとっても可愛い。そして何より男子が惹かれるのは、ウエストの割には大きなあの胸だろうか。
 くそう……私の体には広大な草原が広がっているというのに何だあの立派な山は。見れば見るほど自分との違いに落ち込む。