高橋 那月(たかはしなつき)。身長170センチ、体重56キロ、血液型A型。主な特徴は丸眼鏡。
口癖は「死にたい」。いわゆる、超ネガティブ。
 そんな僕が、まさか恋愛マスターと名高い人気者の梶さんと放課後の教室で、しかも二人っきりで過ごす日がこようとは想像すらもしなかった出来事だ。
 オレンジ色に染まる教室内には、深く俯いたまま身動きのとれなくなった僕と、そんな僕を真っ直ぐに見つめてくる梶さんだけが取り残されていた。
 そもそも、僕みたいな根暗な奴と関わりを持つことさえも梶さんにとっては有害でしかないだろうに。それなのに、梶さんはどうしてあの日、僕にあんなことを言ってくれたのだろう。
 チラリと梶さんの方を見ると、相変わらず僕を見つめたまま唇はずっと閉ざされていた。
 ダメだ。やっぱりこんなの僕らしくもない。ぎゅっと目を閉じ、また深くうつむく。
 前方からはふーっと、長い息を吐き出す音だけが聞こえてきた。
 ほら、こうなるんだ。僕なんかを相手にするとうんざりして、面倒くさくなる。やっぱり言わないと、こんなことやめようって、僕のことは放っておいて欲しいって。
 だけど、それなのに……。


────── 大丈夫だよ、高橋くん。


 梶さんのくれた言葉たちが、みんな耳に残ってるんだ。