「なんだよ、嫌なのかよ?」


戸惑う私にまた、藤沢タクの冷たい視線が突き刺さる。


「そんなことないです!」


「…じゃぁな」


あっ、今。
じゃぁなって言う前に、藤沢タクが少しだけ笑った気がした。


また、ドキッとした。


トイレから出て行く藤沢タクの背中。


何を考えてるのかわからないその背中。


なんか、少しだけ近づいた気がした。



「…いい匂い」


藤沢タクのブレザーから、微かに香水の匂いがする。


スパイシーな大人の香り。


初めて感じる男の人の匂いに、さらにドキドキした。