「バカじゃねーの」


…ん?


前屈みになった私の頭の上から声がした。


びっくりして、バケツを掴まずにそのまま顔を上げた。



「……!!」



ウソっ!!



「藤沢タク!!」


「何やってんだよアンタ」


藤沢タクが戸を開けて、あの冷めた目つきで私を見ている。


「何って…別に…」


…カッコ悪い。
頭からずぶ濡れになって
“別に”なんて。


自分で言いながらおかしくなった。


「ちょっとふざけてたらさ、濡れちゃっただけで…」


苦し紛れの言い訳をしながら、何気なく自分の胸元を見た。