「カバン、貸せよ」



肩に掛けたままだった吉田結衣のカバンを預かった。
これで下りやすいだろう。



「…怖い」


「大丈夫だっての!これぐらい」



その時だった。
遠くから怒鳴り声が飛んできた。



「誰だ!そんなとこに登ってるやつは!」



「キャッ!!…」



怒鳴り声に驚いた吉田結衣がバランスを崩し、体が傾いた。



「…っ!!」



俺は持ってたカバンを放り投げてとっさに前に出た。


条件反射。
体が勝手に動いた。