「『For You』の最後の歌詞を探してたの。
でも見つからなかった」
涙でぐちゃぐちゃになった声でそう言うと、彼は優しく頭を撫でてくれた。
「よく頑張ったね」
ああ、そんな優しい声。
より一層涙が出てしまう。
「優梨花はいっつも頑張りすぎだよ。
意外ともっとみんないい加減に生きてるから」
彼に生前よく言われていた。
自分ではそんなつもりはないし、確かに私よりいい加減に生きている人はいるかもしれないけれど、少なくとも彼はずっとずっと頑張って生きていて、私はそれをずっとずっと尊敬してきた。
「でも俺のために頑張ってくれてありがとう。
俺が生きてる間に優梨花に伝えられなかったから、ごめんね」
彼の腕の中で、私はぶんぶんと首を横に振った。
「……歌詞がないまま発売してもいい?」
想像の彼では意味がないのに、私はまたそんなことを尋ねてしまう。
彼は優しく微笑んだ。
「俺の曲は全部優梨花にあげる。
優梨花がいいなら、送り出してあげて」
うちの子たちをよろしく、彼はそんな風に言った。
うん、今度は縦に1回だけしっかりと頷くと、彼は満足げに笑った。

